三重県志摩市に建つ町のお坊さん家族が住まう住宅である。
南側道路に面している為、遮るものが少なく光が各室に差し込む。故にプライバシーの確保が難しいが、室内でレベル差を付けたり、中間層に庭を設けたり、植物の配置を
考慮したりなど、外観からの予測される視線をずらす事によって、プライバシーの確保も配慮した。
本建築は仏教の教えである「十二支縁起」をもとに建築を行った。十二支縁起は、お釈迦様が悟りを開いた時に発見したものであり、因果の道理を根幹として、本当の幸せ
になるために苦しみの根本原因を明らかにしたものである。これらを我々の人生の箱である住宅に落とし込んだ。「無明」は全ての始まりである「アプローチ」迷いのトン
ネルのように天井が低く設計されている。「行」は生活行為の基盤となる食である「キッチン」。「六処」は最も第六感が研ぎ澄まされ天井から床まで窓一面で開放的な空
間の「リビング」。そして最後は「老死」である一日の終わりを示す「寝室」とした。これらの連鎖は、一つの要因が次の要因を引き起こし、それがまた次の段階へと繋が
るプロセスを形成している。人間が住まう住宅というものは本来これらの連続なのではないだろうか。住宅とは何か、建築とは何か、人生とは何か、そんな問いを与えられ
る出会いだった。