the circle satellite(シェアオフィス)
Bricolage office
最近シェアオフィスやコワーキングスペースという言葉をよく耳にするようになった。
企業や個人が利用するためのオフィス空間や設備をシェアするということであるが、
クライアントはその用途に付け加え学生や年配の人々も含めた地域の交流というキーワードを提示した。
多目的で大きな空間を2700mm×2700mmの県産材ヒノキの箱で区切り用途を分離した。
人が何かをするには十分な大きさの2700㎜×2700㎜(4畳半)は茶室などにも用いられるサイズである。
模型上でその箱を理路整然と並べた後、意図的に揺すってみると、合理的に整列した様から一変不規則で無駄だらけに見えたが、
その隙間ができた事によって境界が曖昧になり、隣同士に新たな繋がりが生まれるのではないかと思った。
ここに訪れた別々の用途同士の隙間で一体何が起こるのか。偶然なのか、はたまた必然なのか。この時点からワクワクは止まらなかった。
更にもう一つ、今回設計において新しい試みをしてみた。それは設計をしないと言う事。
設計図をもとにすべての作業やデザインが構成されることをやめ、私自身最低限決めなければならないことだけを図面化するにとどめた。
空間を構成する壁や天井、装飾品など重要なパーツを美術家やアーティストらの感性に委ね、設計者本人が完成形をイメージできないという試みだ。
愚行ともいえるこの挑戦だが、クライアントを含めこのプロジェクトに関わった多くの人々のおおらかさに依存しながら,
作業が進み完成したデザインに一番驚いたのは私自身であった。
それはブリコラージュという概念に基づく行動なのだがそれはあまりにも危険で多くの人の理解と協力が必要となる。
ブリコラージュとは、理論や設計図で物を作る「設計」とは対照的なもので、
その場で手に入るものを寄せ集めそれらを部品として何が作れるか試行錯誤しながら最終的に新しい物を作ることである。
このシェアオフィスのコンセプトとぴったり合うのだ。その試みを寛容される地域の心の豊かさに感謝し、そしてその力強さには圧倒される。
この場において革新的な化学反応や得難い出会いなどがあることを期待する。